平成版『パーマン』への力強き序章

　事前にファンジンなどで設定情報は入っていたが、新原作調のキャラはともかく、豪華になった須羽家には違和感を感じた。
　また、声優がどの程度揃えられるのかも分からず、安原ファンとしてはキャスト発表まで不安で一杯だった。結局、その多くは杞憂だったわけだが。

　本編で一番震えが来たのは、「行政府は、戦いに敗れたパーマンに代わり、自衛隊の出動を要請しました」というニュースの場面だ。かねてから、現実で事件や事故が起こるたび、（もしもパーマンがいたら）と夢想することが多かった私にとって、現実の世界にパーマンたちが生きているという前提でこの映画が作られているというのは嬉しい驚きだった。
　基本的には藤子ギャグアニメなので、あまり深刻な描写はないのだが、須羽家が東京郊外にあるという描写、パパンダーが暴れる新宿界隈など、あえてリアルさを排除していた８３年版とは違う路線を開拓しようとしているのが実感できるシーンが散見できた。みつ夫がかば夫たちとゲームで遊ぶシーンなど、現代ならではの風景だろう。
　むろん、指摘したい点も色々ある。明らかに未完成なＣＧ背景、３０分という限られた時間だからか、急ぎ足のストーリー、どうしても違和感が拭えなかった増山江威子の声（これは限界があるが）。それでも、パーマン誕生からみつ夫の葛藤、パー子との心の通い合い、事件解決までを描ききった脚本には合格点をあげたい。作画も、富永貞義の作画は端正で、なおかつ動きまわるという爽快感を感じさせるものだった。
　新作パーマンの重要なバックストーリーである、スミレの正体とみつ夫との関係も、ふだんはケンカしながらも、いざとなると心が通じ合い、深く信頼しあっているのが画面から伝わってきた。
　安原ファンとしては、バードマンの活躍が多かったのも高ポイント。どんな顔で自衛隊に頼みに行ったのかは気になるが。三輪さんのラジオ発言によるとかなり緊張してたようだが、それを感じさせない演技ぶりだった。
　魔土災炎の池田秀一もうれしい誤算だった。ご本人はどう思っているか分からないが、新しい世界を見せていただいた感じ。今回のみの出演というのは勿体ない。逆に、ドン石川役の内海賢二は鉄壁の演技だった。
　個人的に印象に残るのは、みつ夫が「パーマンを辞める」とバードマンに言うシーンでの、みつ夫の足下を写すカット。一番お気に入りのシーンは、再びパーマンセットを差し出すシーンでの、バードマンの「分かった」と言う表情である。
　みつ夫のパーマンとしての活躍はまだ始まったばかり。この世界でのパーマンの活躍をもっと見たい。そして、今度こそ真の最終回を見せて欲しい。できればＴＶシリーズか、スペシャルでもいいから作って欲しいものだ。
　ソフト化の際には、ドラＳＰで放映された新作映像もぜひ収録して欲しい。そして、ＣＧも完全版で追加制作をお願いしたい。

　 、